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ペットフードの選び方

我が家のワンちゃん、ネコちゃんにどのようなフードを与えたら良いのかについて悩まれている方も多いと思います。インターネット上には様々な情報があり、どれが正しい情報か分からないといった声も聞かれます。今回は、ペットフードの安全性確保のための規定や、ワンちゃん、ネコちゃんの食性や嗜好などからフードの選び方について考えてみたいと思います。

1、ペットフードの安全性に関する法律

愛がん動物用飼料の安全確保を図るため、平成21年6月1日から、農林水産省と環境省の共管で「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)が施行されており、事業者に様々な責務を課しています。また、ペットフード公正取引協議会という任意団体(国内のペットフードメーカーの多くが加盟)においてもさまざまなルールを設けています。

2、市販フードの種類・目的

上記ペットフード公正取引協議会では、ペットフードの表示に関する公正競争規約を設けており、ここでは、ペットフードの目的として以下の4つが分類されています。

  1. 総合栄養食
    必要としている栄養素をすべて含んだフードで、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持することができるように、栄養バランスが調整されている
  2. 間食
    ペットとのコミュニケーションを取るための手段やごほうびとして、限られた量を与えることを目的としたもの
  3. 療法食
    特定の疾病などに対して、食事療法として与えることを目的としたフード
  4. その他の目的食
    特定の栄養成分の調節やカロリーの補給などを目的として与えるフード

 

3、原材料と表示

ペットフード安全法では、問題発生時に製品や原因を速やかに特定し、ペットの健康被害を未然に防止するため、ペットフードの名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名及び住所の5項目の表示が義務付けられています。
この中で、ペットフードの原材料は重量割合の多い順に記載されるようになっています。ですので、例えば複数の動物の肉を使用している場合や、乾燥肉を利用しているなどの場合は、これらの肉類の表記順は後ろになってしまう可能性はあります。

4、犬・猫の食性

犬や猫は食肉目というカテゴリーに含まれる動物です。ネコ科の動物は殆どが厳格な肉食動物ですが、イヌ科の動物はキツネやイタチなどの肉食動物から、パンダのような草食動物まで多様で、その中で、犬は同属(Canis属)のジャッカルやコヨーテなどとともに雑食動物とされています。犬は、長い人間との共同生活の中で特に雑食性が進み、タンパク質の必要量は人間より多いものの必要な栄養素の割合は人間に近くなっています。ただし、同じタンパク質の含有量であれば、植物性タンパク質より動物性たんぱく質(お肉)を好みます。

5、良いフードはお肉が多い?

猫についてはそもそも肉食動物ですので、腎臓病などでタンパク質やリンを抑える必要が無いのであれば、お肉が多い方がその食性にあっていると思います。また、犬と異なり、アミノ酸の一種であるタウリン、脂肪酸の一種であるアラキドン酸やビタミンB3であるナイアシンを体内で作れないなど、フードに必要な栄養特性が異なります。

犬については、前述した通り、雑食性の動物ですので、肉以外の食べ物からも必要な栄養を得ることができます。ただし、基本的に同じタンパク質であれば動物性タンパク質(お肉)を好む傾向がありますので、お肉の使用量が多いフードの方が食い付きは良いと思います。

6、グレイン(穀物)フリーが良いのか

  1. 穀物の消化吸収について
    グレイン(穀物:米、麦、トウモロコシなど)には炭水化物の他に、様々な栄養素や食物繊維が含まれている優れた栄養源です。しかし、人もそうですが、穀物は生のままでは上手く消化吸収できません。加熱加工を加えることで人も犬も消化吸収ができるようになります。肉食である猫もある程度は消化吸収ができるようになりますが、炭水化物の消化酵素であるアミラーゼは唾液には含まれず、膵臓での生成も犬の約5%と低く、炭水化物の消化は得意ではありませんので、必要以上の摂取は避けるべきだと思います。
  2. 穀物はアレルギーになりやすいのか
    全ての食材はアレルギーの原因となり得ますので、殊更穀物がアレルギーになりやすいという報告はありません。むしろ、アレルギーになりやすい物質には動物性タンパク質が多いという報告があります。また、食物繊維の豊富なフードは、下痢の治療にも用いられることもありますし、トウモロコシなどに含まれるω6脂肪酸は皮膚のバリア機能に大切なセラミドの生成に必要で、アトピー性皮膚炎のコントロールに大切な役割を果たします。つまり、大切なことは、グレインフリーであるか否かよりも、良質の材料を用いているか、全体としてバランスのとれた栄養が摂取できるか、そして、その材料がその子の体にあっているかどうかだと思います。単に穀物をあまり使わず、お肉が多いフードが良いフードであるという単純なものではありません。ここが、フードの良し悪しの判断の一番重要で難しいところだと思います。もちろん穀物の多いフードの中には、栄養や健康面の配慮からではなく、コストを抑えるという配慮から動物性タンパクを抑えていることもあり得ます。

 

7、どこのメーカーが良いの?

メーカーの違いによる病気の発症率や寿命の違いというのは基本的には無いと思います。メーカーによりグレインフリー、オーガニック、ヒューマングレードなど特徴がありますので、これら特徴と費用などを考慮して、何より喜んで食べてくれるものを選ぶのが良いと思います。
ただし、療法食を与える場合は、効果について科学的な根拠を持ったものを選ぶべきだと思いますので、獣医師と相談し決めて下さい。

8、最後に

「先生はどんなフードを選んでいますか」と聞かれることが良くあります。「良く聞くメーカーさんのフードの方が安心ですよ」と答えていた時もありましたが、今は、フードメーカーさんがペットの健康を考えて丁寧に作っているか否か、その心意気が感じられるところが良いのではないかと思っています。

同じフードを食べていても、アレルギーになる子やならない子、尿石症になる子やならない子がいるように、フードが摂取され、消化吸収されていく過程は個々の体質や性格(飲水量や活動量の違いなど)により様々で、事前に予測することは不可能です。また、最終的なフードの選択権は我々にはありません。いくら良いと思われるフードでも当人が見向きもしてくれないようではどうしようもありません。

特にネコでは食事の変化に敏感です。生後3ヶ月位までに食の好みが決定するとも言われていますので、小さい時にはドライ、ウェット含め色々なフードに慣らせておくと良いと思います。

私自身の食生活については褒められたものではなく、乱れたものになってしまっていますので偉そうなことは言えないのですが、美味しいものを美味しく戴くということは心身健康でいるために大切なことと思います。きっと、ワンちゃん、ネコちゃんも同じではないでしょうか。

今の時代、ネット上には様々な情報が氾濫しています。自ら検索して辿り着いた情報は信じてしまいやすい傾向があるそうです。簡単に情報が集められる時代には、情報収集力はあまり必要なく、正しい情報を選択できる力が必要と言われています。そして、その時正しいと考えられている情報も、常に修正される可能性があることも覚えておく必要があると思います。

 

【出典・参考】
(1) 環境省HP ペットフード安全法のあらまし
(2) ペットフード公正取引協議会HP
(3) I.Burger (1997). The Waltham Book of Companion Animals Nutrition
(4) Matanobu Abe. Eating Habits, Food Preference, Food Intake and Other Relating Problems of Dogs and Cats. 1999. ペット栄養会誌2(2):70-77
(5) 坂根 弘. イヌ・ネコのライフステージと栄養(その2). 2007. ペット栄養学会誌, 7(2):67-79

 

 

posted date: 2019/Jun/22 /
category: お知らせ
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