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動物由来感染症(コリネバクテリウム)

おととしの5月に動物由来感染症である「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」により、福岡県の60代の女性が亡くなった事例が報道されました。この女性が屋外で3頭の猫に餌を与えていたことから、この猫からの感染が疑われています。この感染症による死亡例としては国内では初めてであったこともあり大きく報道されました。今年1月には厚労省は各自治体などに通知(健感発 0110 第2号)し情報提供をおこないました。

本感染症は、以前から動物由来感染症として知られており、今回の件についても、菌が強毒化したとかいうものではありません。不必要に怖がらずに、正しい知識を持ち(私の友人はこれを「知のワクチン」と呼んでいます)、一般的な衛生管理(手洗い、うがい、マスクの着用等)をすることで十分予防できます。

1、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症とは

コリネバクテリウム・ウルセランス(Corynebacterium ulcerans)という細菌によって引き起こされる感染症で、ジフテリアによく似た症状を示します。 ジフテリアもコリネバクテリウム属菌が原因の感染症ですが、国内では1999年以降感染の報告はありません。

この感染症は、人、犬、猫、牛をはじめとして様々な動物において感染事例が確認されており、咽喉頭、肺、皮膚、乳腺などに、様々な症状を呈する動物由来感染症です。 海外においては、乳房炎や関節炎に罹患した牛の生乳からの感染が主に確認されていました。最近では、ウルセランス菌に感染した犬や猫からの感染が国内外で確認されるようになっています。 人から人への感染事例は、現在、国内では報告がありません。

2、症状および治療は

症状は、最初に風邪に似た症状を示し、その後、咽頭痛、咳などとともに、扁桃や咽頭などに病変を認めることがあります。重篤な症状の場合には呼吸困難等を示し、死に至ることもあります。また、呼吸器以外(頸部リンパ節腫脹や皮膚病変)の感染例も報告されています。

治療は、抗菌薬の投与により行います。

3、発生状況

国立感染症研究所の調べによると、2001年から2017年11月末までに同研究所で発生を確認しているものは25例と少数です。ただし、この手のものは、大きく報道されると、今まではただの風邪として治療していただけのものも、詳細な検査をする事で発見されたり、この病気も疑って診察する事で見つかったりするため、今後報告例が増える可能性はあると思います。その際にも、感染が拡大しているのか、そうでないのか冷静に判断することが大切です。

4、最後に

決して猫が殊更危険な動物というわけではありません。猫を怖がることよりも、我々は、周囲の人も含め全ての動物から常に病原体の感染の危険性があり、その多くは、手を洗う、うがいをする、マスクをするといった一般的な衛生対策で防ぐことができるということを知る事の方が大切です。正しい知識を持つ事ができれば、ペットと生活することでペットが私たちにもたらすメリットの方がはるかに大きいと思います。

 

posted date: 2018/Jan/19 /
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