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犬の耳血腫

1、はじめに

来年は、日本でラグビーのW杯が開催されますね。そのラグビー選手を悩ますこともある疾患でもあります耳血腫を今回のトピックとしました。

耳血腫とは、その名の通り耳介内に血液が溜まってしまった状態を言います。耳の内側(耳の穴のある側)がパンパンに腫れるので、飼い主様も気付きやすいと思います。治療が遅れたり、再発を繰り返すと耳が変形してしまう場合があります。人間では耳介血腫と呼ばれ、柔道やラグビー選手など耳に繰り返し摩擦刺激や打撲を受ける人に多く発生し、処置をせずに慢性経過をたどるとカリフラワー耳とも呼ばれるコブのような硬い耳となってしまうこともあります。

2、診断

診断は比較的容易で、耳の波動感のある腫れと、腫れた部分から血様液が吸引されることで診断できます。

3、原因

多くの子は、外耳炎などを伴っており、この違和感により耳を掻いたり、頭を振った際に壁などにぶつけたりすることで生じると考えられています。しかし、耳に外耳炎などの異常がなく発症する子も2割程度いることや、ステロイドによる治療に反応することが多いことから、免疫疾患などによる炎症が関係している可能性も考えられています。その他に、中高齢以上で、体格が中型以上のワンちゃん、特にレトリーバーやビーグルなど耳が大きく垂れているワンちゃんに多いため、耳の大きさや犬種、加齢による耳介軟骨の変化も関与している可能性もあります。

4治療

溜まった血を抜くだけでは治癒することはほとんどありません。治療には大きく保存的治療と外科的治療があります。

(1)保存的治療

耳介の手術は、痛みが比較的強い部位であるため、当院では、貯留液が固まっていない急性例では保存的治療を第一選択としています。方法は、まず耳の貯留液を全て抜き、その後に貯留液が溜まっていた空間に副腎皮質ステロイドを注入します。犬の場合、数度の再発の可能性はありますが、9割以上はこの処置で治癒しています。

(2)外科的治療

慢性例など貯留物を吸引出来ない場合などに適応となります。耳介を切開し、軟骨と軟骨の間に溜まった内容物や血餅を除去したのち、軟骨同士が癒着するよう縫合して終了します。強い疼痛とともに、排液も多いため頻繁なガーゼ交換も必要となります。術後も、縫合部位の外側で血腫が再発することもあります。

5、終わりに

耳血腫そのものが生命の問題となることはありませんが、放置すると病巣が拡大するだけでなく、腫れによる耳道の圧迫で外耳炎の悪化や耳介の変形を招くことがあることから、早期治療によりこれらの改善と防止が大切と考えています。

参考文献

Kuwahara, J. (1986): Canine and feline aural hematomas: results of treatment with corticosteroids. J. Am. Anim. Hosp. Assoc., 22:641-647.

Romatowski, J. (1994): Nonsurgical treatment of aural hematoma. J. Am. Vet. Med. Assoc., 204(9): 1318.

伊藤輝男(2017): 耳介の外科. Surgeon, vol.21, No.6: 38-43

posted date: 2018/Oct/23 /
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