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レッグ・カルベ・ペルテス病 (Legg-Calvé-Perthes disease:LCPD)

妙な名前ですが、虚血性大腿骨頭壊死症とも呼ばれる病気です。もしお家のワンちゃんが次の項目に当てはまった場合には、レッグ・カルベ・ペルテス病の可能性があります。

① 1歳未満の成長期の小型のワンちゃん
② 後ろ足に体重を乗せて歩いていない、または足を地面に着けたがらず3本足で歩くようなことがある。
③ 股関節を伸ばすと痛がる。
④ 鎮痛剤と安静で様子をみているけれど、症状が治まらず、徐々に悪化する。

この病気ですが、股関節でトラブルが起きています。骨も骨として存在する為には血液供給が必要ですが、この病気では腿の骨の付け根(大腿骨頭)の部分の血液の供給が不十分となって骨が死んでしまうため、痛みが出てしまいます。その痛みや違和感によって足を使わなくなり、やがて足の筋肉も落ちてしまい、片足だけやけに細いといった状態になってしまいます。なぜ、血液供給が不十分となってしまうのか、その原因はよく分かっていません。

実はこの病気は、人間のお子様にもみられ、5~10歳の男の子により多くみられると言われています。人の場合は安静にして数年かけて治す治療法もありますが、ワンちゃんの場合、安静や鎮痛剤の投与で改善が見られるケースはほとんどないため、手術で治療します。

手術は、ちょっと痛そうですが、痛みの原因となっている大腿骨頭を切り落としてしまいます。関節の骨を切り落としてしまったら一生歩けなくなってしまうのではないかと心配されるかもしれませんが、生物というのは凄いもので、切り落としてなくなってしまった骨のところに軟骨やその他の組織が補うように成長して、新たな関節のような構造を作り上げてくれます(これを偽関節といったりします)ので、やがて走ったり出来るようになることがほとんどです。
改めて、私達の仕事は、動物の自己治癒の力を引き出したり、助けたりすることであって、病気そのものを直しているのは動物それ自体なのだなと思わされます。
より良い回復のためには、術後早くから手術した足をどんどん使うことが必要ですので、術後の飼い主様のリハビリが非常に大切です。

当院で、先日手術したワンちゃんも順調に回復して、後ろ足を使いながら歩けるようになってきています。あと少しの頑張りで、元気に走り回れるようになると思います。

最後に、この病気ですが、遺伝が関与している可能性があるため、繁殖には慎重になるべきかもしれません。

正常なワンちゃんの股関節です。股関節に骨が綺麗にはまり、骨の変形などもありません。


レッグ・カルべ・ペルテス病のワンちゃんの股関節です。向かって右の正常な股関節と比べて向かって左の股関節は、関節が緩んでおり(赤矢印:関節腔が広くなり、亜脱臼を起こしている)、骨の一部が黒く抜けている(黄色矢印:骨の融解壊死が起こっている)ことが確認できます。写真がやや捻れているため正確な比較はできませんが、向かって左の脚は筋肉が萎縮して薄くなっています。手術では青の点線の部分で骨を切断除去してしまいます。

posted date: 2017/Nov/02 /
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